暗いところで本を読むことと目が悪くなることは因果関係がある

 一応先に言ってしまいますが、因果関係とはどういうものかを説明する、あくまで論理の話です。医学の話ではありません。

 因果関係とは文字通り、原因と結果の関係です。原因と結果のつながりであれば「因果関係がある」、そうでなければ「因果関係がない」ということです。厳密には「因果関係がない」というためには「因果関係がない」ことを証明する必要があるでしょうが、少なくともここでは「因果関係がある」といえる根拠がないことをもって「因果関係がない」としてください。

 さて、「暗いところで本を読む」ことと「目が悪くなる」ことに関して世に言われているのは次のことです。

① 暗いところで本を読むと目が悪くなると言われているのは、暗いせいで目が悪くなるんじゃなくて、暗いと目を近づけるから、目を近づけて読むことで目が悪くなるんだ。

 上記の理由により因果関係がないと言われます。しかし、これは「因果関係がある」とするのが正しいです。これがこのエントリーの主張です。

 重要なところを二度書きますが「原因と結果のつながりがあれば因果関係がある」といえます。

 ①で「暗いところで本を読む」ことは、「目を近づける」ことの原因になっています。そして、「目を近づける」ことは当然「目が悪くなる」ことの原因です。つまり、「暗いところで本を読む」ことは「目が悪くなる」ことの原因になっていますから、因果関係はあるのです。

 記号で表せば

A → B かつ B → C

 ……なのですからA → Cも成立していて、AとCには因果関係があるのです。

「暗いからと言って必ず目を近づけるわけじゃないだろ」と思いましたか? それを言うんだったら、目を近づけて本を読んだからと言って必ず視力が悪くなるわけでもないでしょう。

 じゃあ「因果関係がない」というのはどういうことをいうのか。たとえば次の文です。

東大に入学できることと良い会社に就職できることは因果関係があるかどうか分からない。東大を出たから良い会社に入れるのではなく、優秀な人だから東大に入れて、優秀な人だから就職できるんだ。

……という議論があったとします。「東大に入学できること」をT、良い会社に入ることをG、優秀であることをEとすると……

E → T かつ E → G

ということになります。TとGの関係は原因でも結果でもありませんね。これが「因果関係がない」状態なのです。